核共有(核シェアリング)は意味ない!?問題点を解説

昨今核共有が話題に挙がることが多いですが、私は現実的に無理だと考えています。

「核共有」そのまま聞くと核を共有するーつまり簡単に核兵器を手にして、日本も疑似的に核武装することができる…そう考える人が多いようです。ですが実際のところは、核共有はほとんど意味がなくまた核共有をするためには悲愴な覚悟が必要なのです。

核共有、核シェアリングとも言うことがありますが、核共有を主張している人のほとんどはNATOで既に導入されている核共有を念頭に置いているようです。NATO内に核保有国は3か国ありますが、核兵器を提供しているのはアメリカです。

NATO式の核共有のプロセスとしては、平時はアメリカ軍によって防衛され、有事の際には共有国に使用権限が与えられます。しかし核兵器の暗号コードはアメリカ軍が持っており、使用する際にはアメリカの許可が必要です。つまりどれだけ共有国が打ちたがっていてもアメリカがNOと言えばできません。

まず核共有で使用する核兵器についての話をしようと思います。当たり前ですが、アメリカは万一自国に矛先が向かないように射程の長い戦略核や秘密裏に動きやすい潜水艦に搭載できる兵器は共有していません。基本的には小型の戦術核、代表的なのは戦闘機に搭載するB61戦術核爆弾です。弾道ミサイル潜水艦をレンドリース(武器貸与)しようという声がありますが、対NATOでさえB61程度なのですから日本に対して同盟国とはいえアメリカが許可するとはちょっと現実的ではないですね。

ここで考えたいのが、B61を始めとする戦術核が抑止力として機能するのかということです。そもそもB61は戦闘機に載せて落とさなければなりません。日本で配備されている戦闘機:F-35Aの航続距離は2200㎞(本来の性能を隠している可能性もありますが)単純に考えると日本から1100㎞以内でないと攻撃できないということになります。それ以前に敵国に攻め込む場合は敵国の防空網を突破しなければなりません。またB61の威力では敵国にほとんどダメージを与えられないかもしれません。

こんなのが中国やロシアに対する抑止力になるわけがありません。北朝鮮程度ならなんとかなるかもしれませんが、北朝鮮の核の脅威というのは弾道ミサイルがメインであり、北朝鮮軍が日本国内に上陸してくることはまず考えられません。北朝鮮の核ミサイルは世界的な脅威ですし、その場合はアメリカの核の傘の中にいればいい話です。

そもそも核共有の前提としてあるのが、自国(共有国)に迫ってきた敵を自国内で殲滅するという迎撃が目的です。欧州ならロシアと陸続きなのでB61である程度対応が可能ですが、日本は島国ですから、上陸されて地上戦…というのはシチュエーションとしては少ないでしょうし、そもそもこの核共有というのは抑止力を目的としたものではないのです。

なんでアメリカはこんなまどろっこしいことをやるのかというと、核の使用による批判をアメリカだけに向けられるのが嫌だからです。同盟国に対する侵攻に対し同盟国内で核兵器を使用すれば使われた側の同盟国はいい気分ではないでしょう。なので、同盟国もその責任を一緒に背負ってくれ…これがざっくりとした核共有の考え方です。生半可な気持ちで「疑似的に核武装できるんじゃね…?」というのは全くもって的外れなのです。

核共有をやろうとすれば非核三原則の「持たず」「持ち込ませず」にがっつり違反しますし、国際的にもイメージダウンは免れられません。核共有をしたところで効果はほとんどないのですから、冷静に考えてほしいと思います。

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