暫定二車線の高速道路について 課題や国交省の四車線化の動きなど徹底解説

暫定二車線とは、その名の通り暫定的に二車線で開通させた道路のことを指します。一般的に、工事コストを抑えるために上下線それぞれ一車線ずつを開通させる場合が多いです。暫定二車線はバイパスなど一般道でも多く採用されていますが、今回は高速道路における暫定二車線(片側暫定方式)の現状と課題などについて解説します。

なぜ暫定二車線で建設するのか

暫定二車線の大きなメリットとしては建設費を抑えることができる、道路の完成スピードが速くなるなどが挙げられます。その節税分を他の高速道路の建設に充てることで、高規格道路ネットワークを素早く構築することができます。

また、やむを得ず暫定二車線で建設しなければならないケースもあります。例えば必要最小限の予算で建設しなければならない、完全四車線を作るのに必要な用地が取得できていないという理由があると、暫定二車線で建設されることがあります。

暫定二車線は課題が多い

暫定二車線は早期開業・安上がりであるメリットの一方で、大きなデメリットが複数存在します。

重大事故が起こりやすい

暫定二車線は対面通行で運用され、また中央分離帯がなくセンターポール(ガイドレール)が設置されているのみです。そのため、ハンドル操作の誤りやスリップなどの原因で対面車線に飛び出し正面衝突事故をはじめとする重大事故が多発しています。

道路分科会第13回事業評価部会の資料によれば、暫定二車線区間は四車線以上の高速道路よりも2倍近く重大事故が起こりやすいというデータが出ています。


なお、2017年からは少しでも安全性を向上させるため、センターポールに代わってワイヤロープを設置する区間も増えています。ただし、対面通行であることに変わりはないので、抜本的な解決には至っていません。

走行に時間がかかる

暫定二車線は事故が起こりやすいがために、完全四車線以上の道路よりも制限速度が低く設定されています。また暫定二車線は多くの区間が片側一車線で、追い越し車線は上り坂などの一部区間でしか設置されていないため追い越しが難しいです。そのため、低速車両が一台いるだけで全体の速度が低下してしまい、渋滞に発展しやすいです。

採算性が低い

暫定二車線は過疎地に作られることが多いのも要因の一つですが、利用料金は完全四車線以上の区間と同じにもかかわらず上の2つのデメリットがさらに加わることで、利用者にとって高速道路を利用するメリットが低くなってしまいます。その結果せっかく道路を作ったのに採算が取れなくなるケースもあります。

大規模災害時に道路が機能しない

利用者に直接的な関係のない負の側面として、災害時の対応力が弱いことが挙げられます。高速道路は災害時に緊急輸送路としての活用が期待されていますが、暫定二車線道路では完全四車線以上の道路より走行速度が低下するのは大きなビハインドとなります。また道路の一部分が被災した場合は通行止めあるいは片側交互通行を強いられることになり、高速道路ネットワークとしての機能を果たせない可能性があります。

こうした問題を解決するには…

最も望ましい解決策は、やはり早期に完全四車線化することが挙げられます。ただし、日本で2000km以上が暫定二車線で建設されていることを踏まえると、予算的な制約もあり全ての路線で完全四車線化するのには依然時間がかかりそうです。

暫定二車線の解消には国交省も動きだしています。

昨年12月に閣議決定された「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」に基づき、防災・減災、国土強靭化の推進等、安全・安心の確保のため高速道路等の整備が示されていることから、財政投融資を活用し、4車線化を実施することとしました。

今般、来年度に新たに着手する4車線化の候補箇所として、昨今の災害をはじめ、渋滞、事故発生箇所などを総合的に勘案し、計14箇所約86キロメートルを選定しましたので、お知らせします。

今後、予算成立後の事業許可に向けて、必要な手続きを行ってまいります。
なお、残る優先整備区間についても、財源の確保状況等を踏まえ、順次整備を進めます。

完全四車線に踏み切らなくても、利用者増加が見込めない道路では割り切って完全二車線で運用する手段もあります。幅の広い暫定二車線の道路では中央分離帯を設置する方が完全四車線よりも安上がりになります。ただし、道路によっては中央分離帯を設置するだけの道路幅が無いところもあり、そこでは別途道路幅の拡張なども必要になってきます。また、そもそも建設以前に利用者が極端に少ないと見込まれるのならば、中途半端に道路を建設しないという判断をするべきでしょう。

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