高齢ドライバーが免許を自主返納し運転をやめると健康に悪い影響を及ぼすのか

こんにちは。よもぎです。

急に寒くなってきて季節の変わり目という気がしますね。今年に関しては秋どこいったという感じな気もしますが。個人的に私は冬服のレパートリーがそろっていなかったので、最近焦って買い増しました。急な気温変化は本当に困る…

そして秋の花粉の季節のようで、どうやらブタクサの花粉症持ちの友人が最近しんどいとか。花粉症持ちの方はお気を付けください…

さて今回は運転免許の自主返納と健康の関連性について話していこうかなと思います。先日Nathan氏が筑波大学の市川政雄氏による高齢者の死亡事故に関する論文を取り上げていまして、それにインスパイアされて調べてみました。最近交通系ブロガーに舵を切っている気がするので、難解な論文をわかりやすく伝えてみようかと思います。(記事を書いている当人としても論文を読む練習にもなりますし)

ちなみに今回掘り下げる論文は"The Risk of Functional Limitations After Driving Cessation Among Older Japanese Adults"です。英語の論文ですが日本老年学的評価研究(JAGES)によってまとめられています。興味のある方は読んでみてください。


研究の背景

昨今高齢者による重大事故が問題となっています。よくテレビでも高齢者の逆走やペダルの踏み間違いなどによる事故が大々的に報道されていますよね。インターネットスラングとして「プリウス・ミサイル」なんて言葉も生まれました。

ドライバーの高齢化、それに伴い事故における高齢者の割合が高まったことなどから近年では運転免許証の自主返納が推奨されるようになってきました。また自治体によってまちまちですが、免許証の返納で公共交通機関がお得に利用できるようになるなど、単に車を返納するだけではない例が多いようです。

しかし、日本の地方は過疎化が進んでおり公共交通機関が発達していないところも。私の実家の近くなんかも数年前バス路線が廃止され、利便性が格段と悪くなってしまいました。特に日本は田舎における高齢者の割合が高く、公共交通機関がないのに免許は返納しなきゃだし…というジレンマに陥っている人もいるでしょうね。いわゆるデッドロック状態というやつです。

そしてこれが今回の研究に関連するトピックですが、いざ免許を返納したとき健康に悪影響をもたらす可能性があります。これは車という自分で自由にコントロールできる移動手段を失ったことで、社会参加の機会が失われたと考えることができます。

研究手法

あーだこーだ話すよりも結果を見た方が早いでしょうね。研究手法について話しましょう。もう少々お待ちください。

JAGESは愛知県の65歳以上の健康な人を無作為抽出し、アンケートを実施。車を使用していると回答した人を追跡し、その後約10年間で車を運転し続けたグループと運転をやめたグループに分けて比較しました。要は10年間かかった研究ということで、凄いことですよね。

健康度合いに関しては、LTCI給付金の認定を指標として活用しています。この分野に関して私は詳しくないのですが、補助金を受けるには何らかのプロセスがあって、健康が悪くなければ給付金の認定を受けられないということだと理解しています。

統計的な論文であるだけあって、サンプリングには相当気を遣っている印象を受けました。例えば極端に外出したり引きこもったりしている人たちを外れ値として除外しています。また、10年間の追跡の後すぐにLTCI給付金を受け取った人も除外されています。これは免許返納が健康に影響を与えたのではなく、健康悪化に伴い免許を返納したという「逆因果」の可能性を追ったからです。細かいことは論文内、MethodsのDataを参考にしてください。

統計的にはCox比例ハザードモデルが用いられています。これは生存時間解析の手法の一つで、共変量をみるのにぴったりなモデルです。要は関連性を見やすいということですね。(実を言うと生存時間解析は医療分野で用いられがちだそうで、私も初めて知りました汗)有為水準は5%で分析をしています。

研究結果

おまたせしました、ようやくデータにありつけますね。単刀直入に重要な箇所だけ記します。

まず全体として、運転をやめた人は運転をやめなかった人より2.09倍も健康に悪影響があることがわかりました。

また、運転をやめた後公共交通機関や自転車を利用した場合のリスクは1.69倍、家族ら他人の運転を利用した場合はリスクが2.16倍と、大きくリスクが上がることが示されました。

なお、いずれの結果もP値が5%を下回っており、統計的には「正しい」とされる結果となります。

論文内では免許返納によって自立した移動手段を失うことで、アクティブな社会活動が損なわれる可能性があると記されています。


ということで、今回は高齢ドライバーと健康への悪影響の関連性を見てきました。高齢者の重大事故はよく取り沙汰されていますが、免許返納の悪影響というのはスポットライトが当たりにくいところですよね。論文執筆メンバーの市川氏も免許返納に関して警鐘を鳴らしていました。

「運転をやめると閉じこもりがちになり、健康に悪いのではないか。事故の危険だけを考えるのではなく、バス路線を維持・充実させるなど、活動的な生活を送る支援も必要だ」

運転中止で要介護リスク倍、健康に悪影響か 筑波大 より

もちろん免許返納が悪いわけでないのですが、公共交通機関の整備度合いによって免許返納の負の側面というのもあるわけで…将来的にもこの問題とは長く向き合っていく必要がありそうですね。

それではまた。

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